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問われる管理者の経営手腕
病院の事務長の仕事は多岐にわたる.特に民間病院では様々な役割が期待されている.職員の採用,人事管理,能力開発,診療報酬の請求事務,経理,受付やクレーム処理,家族への対応,医療機器の購入とその管理など,病院の生産性の向上と経営効率化のすべてを担っている.場合によっては院長の経営面における秘書役までしなければならない.医師や看護師不足による診療科目の廃止や閉鎖,過重労働によるスタッフの退職や休職,ミスやトラブルによる患者や家族からのクレーム対応も大きなストレスとなっている.
病院の多くが赤字経営が続く中で,その施策に苦慮している.その要因の1つに未収金問題がある.今日,全国の病院の未収金は850億円とも言われている.特に救急部門を備えている病院では,現金を持たないまま搬送されてくる患者が多い.診療を終えて請求書を出しても応じない患者や家族が増えている.しかし,病院は救急患者を診療しないわけにはいかない.また,高齢者の入院を中心とする病棟では,年金生活者も多く,支払いも滞ることがある.未収金の回収には病院の事務スタッフが自宅訪問などして対応しているが,逃げられたり,居留守を使われたり,時には怒鳴り散らす家族までいる.そうなると訪問した事務スタッフもめげてしまい,仕事に意欲を失う.こうなると事務長は,経営者と部下との間で板挟みになってしまう.病院職員のメンタルヘルス対策は,医師や看護師といったスタッフにスポットを当てられることが多いが,その裏で事務長をはじめ,事務スタッフやケースワーカーの努力や貢献度も大きい.過重労働や人間関係の軋轢の陰で,心身の健康障害に陥ったり,そのことで自殺に至るケースもある.働く人たちのうつ病をはじめストレス性疾患の増加に伴い,厚生労働省は「職場のメンタルヘルス指針」を出し,その対策を換起している(コラム参照).以下2つの事例は,事務長のストレスに関するものである.
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