連載 リレーエッセイ 事務長の所感・2
医療安全マネジメントとリスクマネジメント
戸根 経夫
1
Keio Tone
1
1医療法人若弘会
pp.269
発行日 2004年3月1日
Published Date 2004/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100793
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人は必ず過ちを犯すという原点に立って,システムを改善しなければならないことは周知のことであるが,これがなかなか難しい課題でもある.医療の現場では医療の安全にできる限りの配慮をしているにもかかわらず,それでもなお医療事故が起こっている現状を見聞きするにつけ,なおさらその感を強くしている.それぞれの医療機関では医療に関する安全を確保するための一連の取り組みを医療安全マネジメントあるいはリスクマネジメントと総称することが多いのではないだろうか.確かに医療安全マネジメントは患者安全 (patient safety)という視点に基づくものであり,これに異論はないのだが,リスクマネジメントが医療安全マネジメントと同義的に使用されることには少なからず抵抗感がある.
歴史的にみても,人間はもとより,生きとし生けるものすべてが様々なリスクを負って生きている.人は大自然が引き起こす災害,細菌やウイルスなどによる感染,人為的な戦争,交通事故,窃盗などに対処し,その状況を克服することによって自らの身を守ってきた.組織運営においても同様であり,下記に示すような様々なリスクがある中で適切に対処できた組織のみが社会から支持を受け,継続的な組織運営ができるのである.このようなリスクをできるだけ最小限にする,あるいは回避する活動がリスクマネジメントであり,組織防衛活動そのものといえる.したがって,病院における医療事故防止活動はリスクマネジメントの一分野ではあるが,医療安全マネジメントなどと明確に区別したとらえ方が必要ではないかと考えている.
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