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はじめに
「さて今,日本の医療の現場で,事故防止に焦点を当てたリスクマネジメントという取り組みが進んでいることをご存じでしょうか?」……という少々失礼な書き出しで始めさせていただくのは,医療の現場の事故防止やリスクマネジメントの取り組みのなかで,理学療法の領域に携わる皆さんの参加が今ひとつ見えてこない気がするからなのです.だからこそ,医師でもなく,看護職でもなく,薬剤師でもなく,理学療法の領域の皆さんに読んでいただける本誌でのこの特集を大変嬉しく思っています.
本稿を始めるに当たり,お願いが3つあります.
お願い1:「理学療法の領域の事故防止にしっかり取り組んで下さい.」
理学療法の領域には理学療法の領域独自の視点からの事故防止のノウハウが必要です.また,その領域と実践の場が今どんどん広がっていることを心して下さい.例えば,実践の場を地域リハビリテーションへ,そして病院といった医療機関から福祉施設へ,そして在宅へと広げているのであれば,その新しい領域,新しい実践の場での事故防止に注意していただきたいのです.
お願い2:「リスクマネジメントにもしっかり取り組んで下さい.」
事故防止はもちろんですが,事故発生時の対応,またその後の紛争・訴訟の防止と対応も大変重要です.「それでも事故は起きる」のであれば,なおさら,その後のことについてもしっかり取り組む必要があるはずです.
お願い3:「そして理学療法の領域にとどまらず,それぞれの病院や施設で起きている医療事故の防止やリスクマネジメントに是非参加して下さい.」
「うちの組織でも何かやっているみたいだけれど……」なんて醒めていないで下さい.理学療法の領域のノウハウには医療事故の防止に参考になるものがたくさんあるはずなのです.特に転倒・転落については,理学療法の領域の経験を是非病院全体に活かしていただきたいと思うのです.そして,理学療法の領域からの新鮮な視点で,事故防止に向けて,環境やシステムの見直し,組織の見直しに参加していただきたいのです.
お願い1,お願い2に関わる「理学療法の領域」の視点からの報告が本稿のあとに続きます.何より貴重な教育現場,そして実践の現場からの報告の理解のために,また「お願い3」の組織の取り組みへの参加に向けて,本稿では「医療におけるリスクマネジメント」とは何かを整理することにします.
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