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Ⅰ.はじめに
本特集のタイトルは『リスクマネジメント』である。では『リスクマネジメント』としてここで論じられようとしているものは何か。
欧米における医療現場のリスクマネジメント,すなわちヘルスケアリスクマネジメント(HRM)は,医療機関におけるさまざまなリスク,なかでも主として『patient safety』『(紛争・訴訟対応としての)claims administration』『risk financing』といった領域を対象としてきた経営管理の手法の1つである。日本の医療現場では,1990年代,特に1999年の『患者取り違え事故(横浜市立大学附属病院)』や『薬剤取り違え事故(都立広尾病院)』といった医療事故を契機に本格化した近年の事故防止・安全管理の取り組みの初期の段階で,欧米,特にアメリカの医療現場における取り組みの1つとして注目されるようになった。当時はリスクマネジメントのなかでも特に事故防止・安全管理に関連する取り組みに焦点が当てられたこともあり,『リスクマネジメントマニュアル』『リスクマネジメント委員会』『リスクマネジャー』といった用語とともに,当初は事故防止・安全管理の同義語のように使われながら日本の医療現場にも急速に浸透することとなった。
時を経て,本来のHRMに関する理解も進みつつあるが,いまも『リスクマネジメント』を事故防止・安全管理とするものから紛争・訴訟対応とするものまでその理解はさまざまであるし,それぞれの医療機関における『リスクマネジメント』に関連する用語の使い方もさまざまである。本特集でも,おそらく各項を担当される執筆者はそれぞれの『リスクマネジメント』を整理して論じていかれることになるはずである。『総論』を担当する本稿ではまずその『リスクマネジメント』を整理し,そのうえで,いまなお重要な課題である『patient safety』,すなわち『医療安全』に焦点を当てて論じることとする。
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