特集 医療政策の新しい潮流
相補・代替医療の動向と政策選択
鈴木 康裕
1
1栃木県保健福祉部
pp.20-25
発行日 2003年1月1日
Published Date 2003/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100539
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高度に機械化・情報化・細分化され,対人サービスとしてより,臓器の病理に対する科学として発展してきた側面が強い現代医学・医療に対するアンチテーゼ,またはそれによって満たされない要求を受け止める緩衝材として,伝統に基づく,また,新たなパラダイムを唱える一群の健康・医療関連の施術や製品(本稿では「相補・代替医療」と呼ぶ)が台頭してきた.
一方,わが国において,痩身のために服用された,いわゆる「健康食品」(法令上の位置づけは,フェンフルラミンや甲状腺ホルモンなど薬効成分を含む未承認の医薬品)により,4名の死亡を含む,800名を超す被害者が発生したことは記憶に新しく,いわゆる健康食品を含む,こうした相補・代替医療の安全性や有効性については,必ずしも十分な検証が加えられていないのが現状である.
後で見るように,相補・代替医療をめぐっては,支持者による「批判なき熱狂(uncritical enthusiasm)」と批判者の「無知ゆえの懐疑(uninformed scepticism)」の間で議論がすれ違っている観があるが,消費者と患者の利益を第一に考えるならば,科学的根拠と合理性に基づいた,冷静な議論が必要であろう.
筆者は,本年6月までジュネーブのWHO(世界保健機関)本部において,相補・代替医療を含む医療技術・医薬品なども担当する部局のExecutive Directorとして奉職しており,本年4月には伝統医学を巡るWHOの世界戦略を明らかにした.そうした経験を含めて,世界の利用状況を概括した上で,今後わが国において相補・代替医療について可能な政策選択について若干の考察を加えてみたい.
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