連載 リレーエッセイ 医療の現場から
「あなたの家にかえろう」 在宅ホスピスケアを紹介する冊子の制作にかかわって
吉田 利康
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1「おおぞら」遺族塾
pp.447
発行日 2007年5月1日
Published Date 2007/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100514
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冊子『あなたの家にかえろう』は,在宅ホスピスケアを活用するうえでの基礎的情報・事例・精神的サポートなどを読みやすくまとめたものである.A5判,全32ページの絵本のような冊子で,医師への質問の仕方や民間療法,「お見舞いを断る勇気」などについてまとめた「One Point アドバイス」,さらにベッドサイドでの便利グッズも紹介している.2006年8月31日の発行から5万部が出ている.
この冊子のコンセプトは,在宅ホスピスケアという選択肢を,市民と専門職の両方に提供することである.そのため,医療者サイドからの視点だけでなく市民の視点も重視している.制作スタッフには第一線で働く医師,看護師,ソーシャルワーカー,ケアマネジャーの他に,大学の教師や遺族がいる.僕はその一人,妻をがんで看取った遺族である.
苦心した部分は,やはり「いかに死のタブーに踏み込むか」だった.「ホスピスは死に場所」というイメージは相当に強い.「ホスピス」という言葉を使わない配慮が必要とも考えた.ところが,一方でホスピスを美化する傾向が強いことも,制作リーダーの桜井隆医師は指摘する.がんの痛みはコントロールできるようになってきているが,去りゆくこと,看取ることは決して楽なことではない.それをオブラートには包みたくない.
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