JIM Report
―「おかえりなさい」プロジェクト―あなたの家にかえろう
櫻井 隆
1
,
服部 洋一
2
,
徳山 磨貴
3
1さくらいクリニック
2東日本国際大学
3兵庫県立西宮病院
pp.336-339
発行日 2007年4月15日
Published Date 2007/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100922
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あなたもわたしも
仕事が終われば家へかえる
それと同じように
人生という仕事が終わる時は
家にかえろう
住み慣れた家で死ぬということ
櫻井 隆
病院死が84%を超えて,なお増え続けている.今週もあなたは死亡診断書を書いたかもしれない.死亡診断書の「死んだところの種別」の「1.病院」に○をつけて,その人が暮らしていた家の住所ではなく,あなたの所属する病院の住所を書き込む.日本で病院死が在宅死を超えたのは1978年,たった30年前のことだ.欧米でさえ30~40%が自宅で死ぬ21世紀の今,日本人の病院死だけが突出して多い.おそらく人類数千年,悠久の歴史の中で,8割以上の人が住んでいたところ以外で死ぬのは今の日本だけだろう.なぜ,日本人はこんなに死ぬことを病院に,医療にまかせてしまったのだろうか?
20世紀の後半,科学の進歩はめざましく,人々はさまざまな恩恵をこうむった.医学も例外ではなく感染症を克服し,癌治療そして臓器移植,遺伝子治療,もっと高く,遠くへと命を延ばすことばかり考えてきた.しかし結局,最期に人は死ぬ.着陸しなければならない.そのエンディングをやさしく支えるという,ホスピスケアの概念がないがしろにされてきた.
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