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市立砺波総合病院における研修制度導入の経緯とスタートまで
伊藤 恒子
■病院看護師の現任教育の現状
病院全職員のおよそ3分の2を占める看護部の職員教育は,病院としては「看護部のこと」として傍観できない.看護の質は医療の質を左右するといっても過言ではないからである.
「看護部が変われば病院が変わる」そういわれて久しいが,平成18年4月の診療報酬の改定1)では,3.16%という過去最大のマイナス改定の中において,看護が評価され,7対1(従来表記1.4 対1)の入院基本料が新設された.「これを病院の利益に結び付けない手はない」と全国の病院で看護師獲得合戦が始まり,物議をかもしている.しかし,看護師の人員増は業務量の改善につながる一方で,今までにない大量の新人看護師の採用を生み出し,その分医療事故のリスクも増すという懸念もある.また,病院では,患者の高齢化とともに在院日数短縮に伴う入院患者の重症化が進んでおり,それに呼応して看護業務の煩雑化,看護密度の濃縮化がもたらされている.さらに患者の権利意識は上がり続け,多くの病院の労働環境は危機的状態となっている.
こうした状況においても,毎年4月には新人看護師が夢を持って就職してくる.将来を担うこの新人たちを病院は確実に育てる手法を持っているであろうか?制度上は,新卒看護師であっても看護師1人とカウントされ,診療報酬が支払われており,入職直後,既に一人前の看護師であることが求められているといえるが,看護師の基礎教育はそれに対応していない.1996(平成8)年の看護教育カリキュラム改定で,老年看護・在宅看護・精神看護と大きな科目が増える中,臨床実習時間は改定前の4分の1にまで減少した.また,臨床実習病院では医療安全の観点から “免許を持たない学生” のできる実習にはかなりの制限があり,患者選択にも苦慮している現状がある.日本看護協会調査2)では,厚生労働省から示された卒業時の看護技術習得到達目標103項目の中で,「新卒看護師の70%以上が『一人で出来る』と認識している技術項目は,ベッドメイキング,リネン交換,バイタルサインチェック,身体計測」の4項目のみであった.この調査結果はそうした現状の問題点を如実に表している.このような状況にある新卒看護師を,就職直後から看護師一人としてカウントするという現行制度に対し,疑問を感じているのは筆者だけではないはずである.
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