特集 社会保障・税制改革と医療
消費税の課題―逆進性を考える
森信 茂樹
1
1中央大学法科大学院
pp.893-897
発行日 2006年11月1日
Published Date 2006/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100407
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本年 7 月 7 日,歳出・歳入一体改革をその内容とする骨太 2006(「経済財政運営と構造改革に関する基本方針 2006」)が閣議決定された.「2011 年度には国・地方の基礎的財政収支を確実に黒字化する」こと,「基礎的財政収支の黒字化を達成した後も,国,地方を通じ収支改善努力を継続し,一定の黒字幅を確保する」こと,「債務残高 GDP 比の発散を止め,安定的に引き下げることを確保する」こと等をその主要内容としており,「2011 年度に国・地方の基礎的財政収支を黒字化するために必要となる対応額(歳出削減又は歳入増が必要な額)は,16.5 兆円程度…(そのうち)すくなくとも 11.4 兆円以上は歳出削減によって対応する」こととされている.実際の削減額は,11.4 兆円から 14.3 兆円とされていることから,今後 5 年間の税負担増加により対応する金額は,2.2 兆円から 5.1 兆円となった.消費税 1 %の税収はおおよそ 2.5 兆円であるから,消費税率で換算すると,1~ 2%の引き上げで十分まかなえるという計算になる.
この内容については,「不足分は歳出削減でまかなうという姿勢が,簡素で効率的な政府の姿を示した」として前向きな評価を受けている反面,「消費税率の引き上げ 1,2 %で大丈夫という幻想を国民に与えかねない.選挙を前に増税という苦い薬をのむことを逃げた」「歳出削減の実行は誰がどのように担保するのかはっきりしない」という批判がある.また,「国民に歳出削減と増税の選択肢を示すことがなかった」という点を問題視する見方もある(筆者もこの考え方に賛同).
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