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●事業計画の自立性
助成金というのは麻薬のようなものだと思う.毎年多くの医療機関が何らかの助成金を求めて,事業を行う.そのおかげで新規事業の資金調達が比較的容易にできる.しかし,いつの間にか助成金に依存し収支や採算性に正常な判断ができなくなっていくケースがある.まず助成金があって,事業をそれに合わせるようになりがちだ.公共事業といわれるものは過去にその最たるものだったと思う.昨今の状況は確かに厳しいが,状況を予見し,病院事業に取り組むうえで,危険は回避し,機会はものにする.病院事業に正面から取り組む努力は民間病院の本来の姿である.病床規制が始まり,真っ先に公的病院が縮小,淘汰されたことは記憶に新しい.もちろん,優遇税制,公共事業,助成金が悪いわけではない.目先を追いかけるようなビジョンのない経営計画に問題がある.助成金は景気対策と認識し,超高齢化社会という現実にあって,満足度の高い収益力のある事業計画を立てることが大切と思う.
●顧客満足
「経営効率の良い病院」と「経済効率の良い病院」は定義が違う.前者は経営者が,後者は顧客が求める.「門前調剤薬局」や紹介率を意識した「門前クリニック」.そんな正式呼称はないが,前者は薬漬け医療が問題となった時代に導入され,面分業によりアクセスが容易ということになっている.後者は大規模病院がその豊富な医療資源を効率的に活用するために入院中心の医療に特化し,病診連携を進め,かかりつけ医との役割分担を明確にする.高機能外来センターといった高邁な考えに基づくものもある.顧客を意識して努力している結果だと思う.しかし,「紹介率30%以上」という政策目標値を巡って議論があるのも事実である.顧客満足のない数字に求めるべき根拠などない.効率を良くしようと導入されたものが,どんどん非効率に出来高を押し上げることになる.
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