研究と報告
医療サービスの交換プロセスの分析—病院経営論的視点から
中島 明彦
1,2
1名古屋市立大学大学院経済学研究科
2名古屋記念病院
pp.470-473
発行日 1994年5月1日
Published Date 1994/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901235
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はじめに
医療サービスのマーケティングを考える場合,その前提として医療サービスにはどんな特性があるのかを分析しておくことが必要である.我々はこの論文で医療サービスの交換プロセスの分析を行うことにより,医療サービスの特性を新しい視点から明らかにしたい.
その前提として我々は次の2つの基礎的問題を検討したが,詳細は誌面の制約から別の機会に譲る.その第1はマーケティング理論で一般に言われてきた顧客概念(顧客=患者)の見直しである.我々は「消費者とは現在または将来治療やケアを必要とする人々すなわち地域住民,顧客とは現在または将来治療やケアが必要となったときに,当病院に受診しようと思っている人々,すなわち病院のシンパ(新しい中間概念=従来のマーケティングで言う潜在顧客)である」と定義した.病院では潜在顧客の顧客化が重要なのではなく,消費者の潜在顧客化が重要なのである.では患者はなにかと言えば「顧客の代表・モニターである」と我々は考えた.消費者(地域住民)は情報の蓄積により病院の顧客(シンパ)となり,治療が必要になると顧客のモニター(患者)となって病院で受診する.ドラッカー(1987)によれば事業とは顧客の創造であると言うが,これを医療サービスに当てはめてみると,従来のように患者を顧客と考えれば,顧客の創造は患者を作り出すということになってしまう.
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