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Ⅰ.初めに
昨年,多くの問題のあった精神衛生法が改正され精神保健法となり,今年の7月には施行される.この法改正には,宇都宮病院事件をきっかけに起こった精神障害者の人権保護の問題が大きくかかわっている.
法改正の基本は精神病院などへの入院時の精神障害者の人権保護の問題,入院後の精神障害者の行動制限の問題,精神障害者の長期入院の短縮と社会復帰対策の充実である.しかし,多くの精神医療従事者の精神保健法に対する評価は必ずしも良くないようで,施行前から5年後改正の声も上がっている.
精神保健法の基本の一つである,精神障害者の精神病院などの施設への長期滞在を短縮する方法論の一つにデイケアが考えられているようで,今回の医療費改定でも精神科作業療法関係では,デイケアだけが少しだが引き上げられた.この時期にデイケアについて作業療法士として歴史的展望を書いておくのはだいじなことであろう.
我が国の精神医療の中ではデイケアという名称が定着しており,その意味するところは加藤1)らが「通所」という言葉を加えた昼間通所治療と訳したことでも推測できるように,入院医療に対して,外来医療ないし非入院医療を総称しているように思える.しかし,実際のデイケアの内容は石原2)が「精神障害のrehabilitationをデイケアの立場から論ずることは,今日のわが国の現状からすれば極めて困難な面が多い.それは精神医療におけるrehabilitationそれ自体が,理論的においても実践においても,現在なおかなり流動的であることに加えて,デイケアについては,その意味論がまだ十分に論議されていないように思われるからである.」と言っていることに集約されよう.
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