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Ⅰ.初めに
理学療法,作業療法,精神科作業療法とともに,精神科デイケアについても施設認定基準が示され保険点数が新設されたのは,1974年1月22日(保険発5)25日(厚生省告示第16号)であった.
それまで永年の実績積み上げで,ようやくにして点数化が実現した後追い法律型の理学療法,作業療法(身障,精神)と異なり,精神科デイケアは二・三の先進的施設で実験的に試みられていた以外には,外来通院による精神科作業療法としての実績がある程度で,一般的に精神科デイケアという呼称も,当時ではまだ耳新しく感じられたほどで,法律(点数化)先行によって精神科デイケアの普及が始まったとも言える.
このことは,入院医療費の肥大化を憂慮する厚生省の経済的思惑もからんでいたであろうが,精神障害者および医療関係者らが要望していたところの,入院治療(閉鎖型)より外来治療(開放型)へとの,精神科医療理念とも合致し,細目の不備はともかくとして大筋では時代のニーズに沿った施策でもあった.
しかし点数新設当初の施設認定基準は,人の面で作業療法士(当時は養成校不足)の配置が必須の条件と厳しく,物の面では建物面積の明示が無く曖昧(あいまい)なためにかえって厳しく運用されていた.そして一日当たり70人と非現実的な通所者人数の設定,保険点数60点と原価保障には程遠い報酬で出発したこともあって,厚生省が期待したほどには精神科デイケアの施設数増は進展しなかった.
以上諸々の隘(あい)路も,その後幾(いく)度かの診療報酬改善によって,現在では40人330点と,もう一段の改善点を残してはいるものの,通所者人数の基準にして43%,点数にして450%の大幅な改善率になり,他の精神科医療技術料の改善率と比較するに破格の扱いで,精神科デイケアの育成には厚生省のなみなみならぬ肩入れを感じとれる.加えて作業療法士配置条件の一時的緩和(作業療法士急増の現在では条件緩和の必要性は無くなったが)と,建物面積の明示がなされて,病院事業者の精神科デイケア設置への意欲増強に大きく寄与し,点数新設後10数年を経過した今日では,ほぼ順調に認可施設数も増加しつつある.
今後これから,精神科デイケアをどのように育成し発展させていくか,または著しく偏向させ医療荒廃への道に追いやるかは,一に施設基準および診療報酬の在りかた如何にかかっていると言っても過言ではないと思うので,法的経済的基盤の現状を分析しつつ,改善すべき要望事項をも付け加えながら以下順次述べることにする.
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