特集 老人保健法—2年が経過して
老人保健法と病院医療
桑名 忠夫
1
Tadao KUWANA
1
1社会福祉法人信愛病院
pp.632-636
発行日 1984年9月15日
Published Date 1984/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206920
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■はじめに
老人保健法が施行されて1年数ヶ月を経過したが,この法が,医療サイドは申すに及ばず,社会的にも大きな波紋を投げかけていることは,大方の認むるところである.16年間老人医療と取り組んで来た病院にとって,老人保健法の制定は,地域老人に対して,全人的医療ケアサービスの提供を可能ならしめてくれるものと信じて疑わなかったのであるが,現実は誠に厳しく,国の医療財政の建て直しのみが優先しており,未だに医療現場は,とまどいの最中にあり,入院治療から在宅医療への転換は,老人が老人を見るというギリギリの状態の中で,各地での悲劇も報道されているのが実態であるといえよう.申すまでもなく,老人医療においては,単に治療だけではなく,福祉・保健をも包含した体制が要望されるところであるが,地域医療を志す1病院が,老人保健法施行に至るまでの期間,如何なる歩みを続けてきているか,そしてまた,この法の施行から1年余,キュアをベースとしたケアを,そしてケアをベースとしたキュアを,如何なる形で実施しているかについて述べ,併せて,老人医療の将来像への模索にも触れてみたいと思うのである.
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