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はじめに
特発性側彎症とは,脊柱が側方向にまがり,かつ水平面ではねじれる3次元的な変形をきたす原因不明の疾患である.側彎症の変形因子としては,側方屈曲変形lateral flexion deformityと体長軸のまわりの回旋変形axial rotation deformityが重要視される(図1).
特発性側彎症の診断では,普及しているX線撮影により脊柱の映像化が容易なことから,従来X線学的検査法が重視されてきた.側方屈曲変形については,前後方向のX線写真よりCobb角を計測することによって定量的評価が可能であるのに対し,回旋変形については,定性的なNash & Moe法はあるものの定量的評価は不可能である.そこで2方向同時X線撮影のコンピュータ処理による3次元脊柱形状の再構成や,CTによる横断面の画像化により,脊椎の回旋変形を評価しようと試みられてきたが,日常臨床上に常用される方法となるに至っていない.
脊柱の変形は,特発性側彎症という病因不明の疾患の病態の1つに過ぎない.一方,特発性側彎症の呈する病像は,高度にならないと機能障害(呼吸不全,疼痛など)は出現せず,中等度までは脊柱を含めた体幹部の変形という形態異常である.従来の診断学では,体表変形の診断は背部に限定されており,背部の肋骨隆起(rib hump)または腰部隆起(lumbar hump)の有無を観察することが重要な診察項目とされていた.しかし体幹形状を全体として観察する方が情報量が多いと考えられる.
筆者らは,特発性側彎症の回旋変形を評価するには,脊柱に固執することをやめ,観察の視点を転じて体幹体表形状全体を実立体として3次元的に計測し分析を加えることが有利であろうと考えた.それを実現するために1979年以来1)体幹体表水平横断図形計測装置の開発に携わってきた.一点式の装置については,laser torsographyと命名し,特発性側彎症の評価2)や,患者の経過観察3),さらに学校検診4)において有効であることを示した.その後臨床現場での実用性を増すために測定レベルの多点化を目指し,1984年12月に3cm間隔で10断面の体表水平横断図形を一度に計測できる機種を完成した5).光源はレーザーのかわりに発光ダイオード(LED)を使用したためoptronic torsography (OTGと略す)と命名した.その後の改良により,より高速の測定処理が実現できたので,本稿ではこの装置について述べる.
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