プログレス
補聴器の最近の知識
大和田 健次郎
1
1福生病院耳鼻咽喉科
pp.773
発行日 1986年11月15日
Published Date 1986/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103674
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わが国に補聴器が輸入されたのは1911年で,当時は電話器と同じ構造であった.その後,真空管,トランジスタを経て現在ではICが使われるようになり,小形化の進歩は著しい.形は箱形から耳掛形,挿耳形となりさらに外耳道に入るカナル形もつくられ,装用感の改善と共に見えにくい補聴器となった.カナル形は小形のために出力音圧が他に比し小さく,軽度あるいは中等度難聴に適応が限られる.
高齢者に多い感音難聴では,単に周波数別の音の感度が低下しているだけでなく,内耳で音波を神経興奮に変換するときに,毛細胞障害によるひずみが加わるので,ことばの明瞭さが低下する.眼鏡と補聴器がよく比較されるが,眼鏡はレンズ系の変化を物理的に測定し補正すれば,光を神経興奮に変換する感覚細胞は正常であるから,眼鏡をかければ直ちに正常に見える.感音難聴は感覚細胞の障害であるから,補聴器で正常にきこえるようにはならない.内耳で生ずるひずみを改善するような補聴器はまだできていない.しかし現在の補聴器でも種々の特性のものがあり,調整機構もあるので,聴力と補聴器の特性を関連させてフィッティング方法を工夫すれば,うるさいばかりでよく聞こえないという不評を改善することはできる.
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