The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 20, Issue 10
(October 1986)
Japanese
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はじめに
障害の質という面では異なるにせよ,精神薄弱者も障害者であるという点では,身体障害者と同等である.それにも拘わらず,精神薄弱者に対する雇用促進対策は,身体障害者一般に較べて今なお遅れていることは否定できない.もちろん,精神薄弱者に対しても身体障害者雇用促進法の準用または部分的適用により,かなりの対策は講じられてきたが,すべて後追いのかたちをとっており,現時点ではまだイコールにはなっていない.その実質的な理由づけには,職業適応の困難性や,適職開発の遅れならびに社会生活指導面での特別配慮の必要などが挙げられてきた.したがって,身体障害者雇用促進法においては,その附則第4条で「精神薄弱者の職能的諸条件に配慮して適職に関する調査研究を推進するとともにその雇用について事業主その他国民一般の理解を高めるよう努めるものとし,その結果に基づいて必要な措置を講ずる」ことになっており,それまではいわば暫定的な措置で推移することになっている.
精神薄弱者における職業的ノーマライゼーションの観点から見ても,一般雇用の場を拡大させ,その職業機会の確保に勢めることは,国,民間を問わず国民的た課題の1つであることは明らかである.こうした問題は,ポストIYDPの論点にもなってきたが,労働省はそれに対処するため,昭和59年5月,職業安定局長の私的諮問機関として,「精神薄弱者雇用対策研究会」を設け,精神薄弱者雇用における今後の条件整備対策の進め方や,雇用率制度を適用すると仮定した場合の問題点等について検討を進めた.昭和60年6月,その報告書がまとめられ,職業安定局長に提出された.
この報告書を足場として,労働大臣の諮問機関である身体障害者雇用審議会は,昭和60年8月,部内にこれらの問題について検討するための小委員会を設け,活発な論議を経て昭和61年7月17日,報告書がまとめられた.これを身体障害者雇用審会で審議し,同日,審議会意見として労働大臣に提出した.今後はその線に沿って,法改正が行われ,精神薄弱者雇用対策の充実が図られることが予想されるが,本稿では,さきの「研究会報告」ならびに「審議会意見」を中心にして,現状の問題点の指摘と,わが国における今後の精神薄弱者雇用の前途を占うことにする.
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