The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 20, Issue 10
(October 1986)
Japanese
English
特集 リハビリテーション施設体系
老人のためのリハビリテーション施設体系―居宅主義の理念から見直す
Rehabilitation Institutions for the Aged: Another Look from the Viewpoint of Residential Care
岩崎 テル子
1
Teruko IWASAKI
1
1国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院
1School of Rehabilitation, Tokyo National Chest Hospital, Dept. of Occupational Therapy.
pp.671-680
発行日 1986年10月15日
Published Date 1986/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103649
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はじめに
東京山の手のある住宅地に,新しい老人ホームを作る会が生まれた.59年8月のことである.発起人は,家で世話をしていたねたきりの母を自分自身の手術のため,止むを得ず入院させて死なせた主婦である.もし近所に短期間預けられる施設があったら,母は死なずに済んだかも知れない.何故なら家に居た時母は病状が安定していたのだから.この痛恨の思いが一層彼女を老人の在宅ケアへ駆り立てた.
地域福祉の基盤としての小規模多目的施設,それが彼女を中心として草の根福祉運動をすすめてきたボランティア組織の目的である.居住地で,定員10~20名(老人福祉法の特別養護老人ホームは50名以上)の,短期から長期まで必要に応じて滞在出来る施設.リハビリテーションを充実させ治療も受けられる,しかも近所の健康老人も利用出来,地域の人々全体がボランティアとして支える“地域に開かれた家庭”(設立準備会趣意書).これがその小規模多目的施設の目的であり内容である.国の補助の枠外にあるため,今準備会は賛同者を集め資金作りをするため,勉強会研究会等精力的に活動している.
老人を慣れ親しんだ人や土地から離してはならない―居宅主義の原則は,福祉の思想の域からようやく住民の生活欲求になりつつある.この在宅ケアの視点から老人の医療・保健・福祉の施設体系を見直してみると,また新しい視界が開かれるのではないか,これがこの小論の目的である.
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