The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 20, Issue 10
(October 1986)
Japanese
English
特集 リハビリテーション施設体系
精神障害者のためのリハビリテーション施設の動向と課題
Rehabilitation Institutions for the Psychiatrically Handicapped Persons: Trends and Problems
関 昌家
1
Masaie SEKI
1
1金沢大学医療技術短期大学部
1School of Allied Medical Professions, Kanazawa University.
pp.665-670
発行日 1986年10月15日
Published Date 1986/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103648
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Ⅰ.はじめに
精神障害者のリハビリテーションにはさまざまな問題がある.その問題点の多くは精神病に関するもの,精神障害者の家族,社会の偏見等1,2)であるが,その中心は精神医療と社会の狭間での葛藤である.まず社会の精神障害者に対する理解には,誤解にもとづいたものが多い.
例えばマスコミを見ても精神障害者の社会復帰に関連した話題が取り上げられることは皆無に等しいが,身体障害者の社会復帰に関する話題はよく見掛ける.まれな精神障害者がマスコミの話題になるのは,精神障害者の起こす事件である.確かに精神障害者の起こす事件は社会にも精神障害者にも不幸なことである.それにしてもこの差の一つには,精神障害者を社会から隔離することに,多くの人が無言の支持を与えており,精神障害者の医療や社会復帰に携わる人々の努力を最小限にしか評価しない現実があるのではなかろうか.さらに法的にも精神障害者は蔑視されてしまうような用語が使用されている.
例えば,同意入院に必要な保護義務者の選任申立書では患者は事件本人となっており,家族が非常に困惑する名称が使われている.このような現状の中での精神障害者の社会復帰は,簡単ではない.かと言って尻込みしてしまっては何もならないのである.
もし精神障害者の社会復帰に対する援助を何もせず手をこまねいて見ていたら,呉3)が「我邦十何万の精神病者は実にこの病を受けたるの不幸の外にこの邦に生まれたる不幸を重ねるものと云うべし」と残した言葉そのままであると言えよう.そこで精神障害者のリハビリテーションについてその歴史的経過から考えてみることから始めてみる.
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