プログレス
抗生剤の知識
池本 秀雄
1
1順天堂大学医学部内科
pp.331
発行日 1985年5月15日
Published Date 1985/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103326
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抗生剤の恩恵は計り知れないものがある.かつて肺結核と肺炎はわが国の死因順位のなかで常に1,2位を争ってきた.現在では肺炎が第4位に留まっているものの,結核ば10位以下に下った.乳幼児の肺炎死や青年の結核死が著明に減少したことが,国民の平均寿命の延長に大いに寄与したものと思われる.まさしく抗生剤を始めとする抗菌剤ないし化学療法剤のお蔭であり,これらが20世紀の人類の遺産であるといっても決して言い過ぎではない.
抗生剤の今日の動向ないしトピックスを知るためには,まず抗生剤の発展の歴史を知る必要があるし,このことによって理解をいっそう深めることができよう.
抗生剤を相撲取にたとえるなら,さしづめ東の横綱はペニシリン,西の横綱はセフェム(セファロスポリン)であろう.両者をあわせてベータ・ラクタム系抗生剤ともいう.しかし,病気のなかには両横綱でも勝てないものがある.たとえばマイコプラスマ肺炎(エリスロマイシン,テトラサイクリンが有効,以下同様),オウム病(テトラサイクリン),在郷軍人病(エリスロマイシン),腸チフス,パラチフス(クロラムフェニコール),結核(ストレプトマイシン,リファンピシン)等である.このほか真菌や原虫や寄生虫の病気もそうである.
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