とびら
多忙のツケ
宮前 珠子
1
1国立身体障害者リハビリテーションセンター
pp.825
発行日 1984年12月15日
Published Date 1984/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103215
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教育から臨床に戻って2年,自由にできる時間のない,私としては今までにない忙しさに見舞われている.連日朝から夜10時,11時まで,患者,見学者,学生,会議,事務,研修会,調査・研究,そして外部の仕事等々,種々雑多な事柄にめまぐるしく追われている.患者の評価だけでなく,いわば薬の役割を果すことが主務である我々の仕事は,それだけでも1日を使い果してあまりあるにもかかわらず,その他の仕事が余りにも多い.あたかも次から次へと投げられてくるさまざまなボールを,連日朝から晩まで休みなく打ち返し続けるかのようなその日暮しのこの生活は,私に豊富な社会的経験を与え,ささいなことへのこだわりを次々と取り去っていくと同時に,未来に対する感受性を限りなく鈍化させ,以前には見えていた長期的見通しとでも言うべきものをほとんど見えなくさせてきている.私の脳細胞は今,ボールが飛んで来ない時間,ひたすら休息を求めてボヤーッとしており,それに対して何の不快な情緒も起こさずかなり心地良い状態にある.つまり暇がないので余計なことは考えない,という好ましからざる状態なのだ.
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