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はじめに
免荷と固定は補装具を処方するための重要な要素であり,その目的を達成するための方法には,絶対的なものが要求される.
特に下肢免荷装具に対する負荷の獲得は,解剖学的理論によって設計されるもので,その目的は,踵骨に負荷させないことである.
免荷とは,物体に外部からかかる力をやめさせることであり,負荷とは,力を背負うことである.
したがって,下肢免荷装具は,下肢にかかる体重を下肢骨を媒介せず,装具によって床面へ伝達し踵骨の浮上によって評価され,長下肢装具と短下肢装具に代表されている(図1).
また,足底装具のアーチによる部分的な免荷や,骨突起(両果骨)部を支持点とする免荷が考えられるが基本的には,長下肢,短下肢装具によることが多い.
下肢免荷装具の負荷方法は,原則的には義足の負荷方法が採用されており,長下肢装具には,大腿切断義足の坐骨結節支持を,また,短下肢装具では,下腿切断義足のPTB方式を負荷方法としている.しかしながら義足は,体重を支持するための負荷であり,免荷装具は,体重を免荷するための負荷である.
したがって,義足と免荷装具の負荷方法は,方式的(坐骨支持,膝蓋靱帯支持)には同一視できても,内容的には,相異するものであることを認識しなければならない.
大腿切断では,坐骨結節を支持点としながら負荷をソケット全面に分布し,特に断端末支持を目標にした全体荷重であり,下腿切断では,坐骨のような水平支持面が得られないために,幾つかの支持点を対立的に設定している.これも全体荷重が目標でエアー・クッションソケットによる浮腫と血行に対する対策は,同時に断端荷重への関心である.いずれにしても断端ソケットでは,全体荷重が目標で,更にソケットの支持性は歩行振り出しにも関与する.
下肢免荷装具の負荷は,全体荷重ではなく疾患部より近位でのワンポイント負荷の獲得である.この根本的な相異に対する適合のあり方が下肢免荷装具製作上の要素になる.したがって,断端ソケットに対する全体荷重を目標にする義足の負荷方式が,ワンポイント負荷の免荷装具にどう採用されているのか,比較してみることが下肢免荷装具に対する基本的な考察になるものと考えられる.
また,アライメントの設定にもその原点において,全く異なるものがある.
義足におけるアライメントは,切断による下肢骨の欠損に伴う筋力の低下があり,前額面での側方の安定性(骨盤保持)に難がある.矢状面では,膝軸の機能的な安定と踏み返し転動性との調和が要求される.これが義足作りの要素である.この重要な義肢上の問題が下肢免荷装具ではほとんど問題にならない.すなわち,側方の安定性と膝軸の安定性を支配するアライメントは,正常下肢機械軸そのものであり,側方の支持点,歩行振り出しの支持点も特に考慮する必要がない.
ワンポイント負荷の獲得こそ下肢免荷装具の生命である.
ワンポイント負荷の獲得を大前提としたものに,トーマスリング方式がある(図2).このリング方式が下肢免荷装具の負荷の原点である.長下肢免荷装具は,この単純な負荷方式を基本にして,免荷に繋がる幾つかの要素を絡ませることが免荷をよりよく表現する設計である.
下肢免荷装具の負荷とこれに繋がる要素について,まず,負荷に対して義足との比較を試みよう.
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