The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 16, Issue 2
(February 1982)
Japanese
English
特集 老人
高齢者の排尿障害
Dysuria in the Elderly
江藤 文夫
1
Fumio ETO
1
1東京大学医学部付属病院
1Department of Geriatrics, University of Tokyo Hospital.
pp.97-102
発行日 1982年2月15日
Published Date 1982/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102572
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I.はじめに
老年医学的に現在解決されねばならない重大な症状としてまず挙げるべきものは精神錯乱と転倒と尿失禁の3者である.排尿障害は排尿機構における種々の原因により生じるが,いずれの場合も尿失禁に連なることがある.それは本人や同居者にとっては不愉快なものであり,極めて障害となる症状である.そこで,尿失禁の成因を中心に老年者の排尿障害について考えてみたい.また,尿の回数が多い,尿量が多い,その反対に尿量が少たいといった訴えの場合に心不全や腎不全が関与する場合があるが,ここでは触れないこととする.
排尿障害の症状と頻度については表1に示すような報告がある.主として英国での報告をいくつかまとめたものであるが,排尿障害は在宅老人患者より入院患者に頻度のより高いこと,今日では治療が進歩したことから頻度や分布が異なっているであろうと注釈されている1).入院中の老年患者における尿失禁の頻度は対象となる病院の内容により異なるものであるが,男子では18~40%,女子では24~46%との報告がある1).表2は,いわゆる老人病院における排尿障害を,おむつないし留置カテーテルなどの使用状況から,診断別に頻度をまとめたものである.排尿自立者の頻度は全体の約40%に満たないことと,非痴呆患者においても,おむつ使用者の多いことに注目すべきである.後述するlocomotor incontinenceが多いからでもある.
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