プログレス
向精神薬の最近の動向(Ⅲ)―予防薬Prophylactics
吉田 弘宗
1
1慶応大学医学部精神神経科
pp.819
発行日 1981年9月15日
Published Date 1981/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102483
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向精神薬が臨床応用されるようになってからどのような種類の薬が開発されてきたかを振り返ってみると,おおよそ次のような傾向がみられる.向精神薬開発の初期においては治療の目標は比較的表立って現れる陽性症状(たとえば幻覚,妄想,作為体験など)や精神運動性興奮などにおかれていて薬の種類としては抑制作用(抗幻覚作用も含めて)を主薬効とする系統のものであった.
次の時期にはその治療目標が陰性症状(たとえば自閉,感情鈍麻,意欲減退など)に置かれ,脱抑制系(賦活型)の薬物が開発された.こうして向精神薬はその効果として急性期から慢性期に至るまでの精神症状をカバーすることになったが,一方では再発(精神科では再増悪ともいう)する患者は後を断たない.したがって再発の予防薬の出現は精神科医療の関係者にとって一つの夢であるが確実な予防薬は現在はまだ存在しない.
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