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■はじめに
1994年4月の診療報酬の改定に伴い,入院集団精神療法が診療報酬請求の対象として認められるようになった。通院集団精神療法もその対象枠が拡大された。また,診療報酬改定に伴う指針が示された。それによると,入院集団精神療法とは「言葉によるやりとり,劇の形態を用いた自己表現の手法等により,集団内の対人関係の相互作用を用いて,対人場面での不安や葛藤の除去,患者自身の精神症状・問題行動に関する自己洞察の深化,対人関係の修得等をもたらすことにより,病状の改善を図る治療法である。」と定義されている。また実施する際は1回15人を限度とし,1日につき1時間以上週2回といったレセピーが示されている。中久喜28)は日米の入院集団精神療法を比較した論文の中でこの保険化を「入院治療における集団精神療法の効果と必要性が公的(official)に認められたことを意味する」と高く評価し,彼自身が1966年に東大の精神科病棟で集団精神療法を始めた頃の苦闘を回顧している。筆者の1人(鈴木)は当時新入医局員として参加した者であるが,この時の体験を思うとき,まさに隔世の感を持つのである。さて今回の保険化に伴う指針は公的機関の一応の指針であり,これが最も治療的な方法であるというものでないことはもちろんなのであるが,こうしたガイドラインのほうが先行してしまって,今後の集団精神療法の臨床の状況を支配するものになったりしては本末転倒であるという危惧を感じるものは筆者のみではなかろうと思う。現に中久喜の論ずるアメリカの集団精神療法の発展の歴史は,支払機関による制限によってリードされてきた歴史とでも言えるような状況を示している。そこで本小論では集団精神療法における世界的な状況・動向にも目を向けながら,我々の日常の臨床の動向を検討し,その上で最も治療的な臨床状況を発展させるにはどうしたらよいかについて検討したい。
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