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Ⅰ.はじめに
医療という臨床の場において面接が重要な治療的役割を果たしていることはいうまでもない.その中で本論の主題である精神療法は治療者と患者の間で営なまれる言語的交流を主としたコミュニケーション手段としての治療行為といえる.しかし精神療法といっても交流が行われる構造(structure)によってさまざまな修正がなされねばならない.つまり入院精神療法か通院精神療法か,患者の病態水準は精神病領域か境界例領域か神経症領域か等々によって技法の修正,構造の修正が行われる.しかし構造上のちがいがあるにせよ精神療法が目的とする患者の内的世界に重点を当てていくという立場にたてば基本的な視点の共通するものは多くあるといえるだろう.さて本論においては精神分析的オリエンテーションにたった精神療法を巡る問題をいくつか述べることにする.
そもそも19世紀末にFrendが創始した精神分析療法はその後約1世紀近くを経て多くの修正,発展をとげてきた.その第一は治療対象が拡大されてきたことである.もっばら成人の神経症を治療対象としてきたFrendに対して精神病,境界例,心身症などが対象となるとともに,児童,思春期,老人などのさまざまの年代の人々が対象となってきた.第二には成人の神経症を寝椅子使用による自由連想法を外来通所によって実施していたのに対して入院という構造の元で対面法で行われるようにも修正,拡大されてきた.
近年,精神科領域においては,入院治療の重要性を認めながらも社会生活をおくりながら,通院による治療を行うことの意義が改めて認識されてきたことは上記のような歴史的発展を振りかえりながら考えると興味のあることである.
それでは次に入院治療と通院治療に内在する構造上のちがいについて述べてみよう.
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