The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 14, Issue 10
(October 1980)
Japanese
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はじめに
二分脊椎とは棘突起や椎弓が先天的に欠損してる状態をいう.その外観上から顕在性二分脊椎と潜在性二分脊椎の2つに大別される.しかし二分脊椎が臨床上問題となるのは,これに合併する神経の異常である.つまり棘突起や椎弓がある程度欠損していても脊柱の支持機構としての役割には障害がおよぶことはほとんどない.神経の異常によってひきおこされる麻痺の程度や高さなどにより脊柱の変形,下肢の機能障害,排尿障害などがもたらされるのである.
顕在性二分脊椎も潜在性二分脊椎も本質的には同じものである.二分脊椎という疾患は単に椎弓の欠損を有するのみでなく,脊髄,筋・靱帯・皮下脂肪,皮膚など障害のある部位すべての組織,器管の障害が,さまざまの形・程度で合併しているものであり,近年は脊柱管癒合異常(spinal dysraphism)と呼ばれることもある.
顕在性二分脊椎はこれらすべての障害が高度のものをいい,椎弓欠損も高度で,皮下組織,皮膚は欠損し,クモ膜や脊髄が外界に露出している.この状態は生下時に見逃されることはまずないという程に目立つ外観を呈するものであり,また放置すると容易に感染し髄膜炎を併発して死亡することも多い.合併する麻痺は高度かつ広範であり,古くからその存在と病理は知られている.
潜在性二分脊椎は,障害部位が健常あるいはそれに近い良好な皮膚で覆われているものをいう.したがって診断はX線写真によってなされ,椎弓の欠損が認められる.この潜在性二分脊椎が臨床上どのような意義を有するかは近年までほとんど不明で,椎弓欠損が広範かつ高度のもののみが病的とされていた.しかし近年著者が行った調査からも,次第に明らかにされてきているものであるが,潜在性二分脊椎においてもいろいろな形,程度の神経の異常を合併してることが判明してきた8).
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