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はじめに
術中神経生理学的手技は,術中の神経機能同定(mapping)と神経機能監視(monitoring)からなる.腰仙部手術においては,神経機能同定としての陰部神経同定・神経根直接刺激による脊髄神経前根の高位レベル同定,神経機能監視としての球海綿体反射(bulbocavernosus refex:BCR)が主な術中神経生理学的手技となる8〜12,18).また,腰仙部脊髄腫瘍手術にあたっては運動誘発電位モニタリングも欠かせない5).
マッピングは,病変によって正常解剖が圧迫・偏移した状況において,神経生理学的に外科解剖を明らかにする.マッピングによって外科解剖を把握すれば,手術中の直接損傷を避けることも可能となる.一方で,マッピングを行うには外科手技を一時的に中断する必要がある.また,手術部位・剝離面の違いによってマッピングを繰り返す必要があり時間を要す.この点が手術中の問題となる.モニタリングでは連続的・経時的に神経機能を監視することが可能である.しかし,神経筋接合部・シナプス伝達部を介する神経経路・機能の監視では,もともとの神経障害あるいは麻酔薬の影響で術前よりモニタリングが不可能となることも少なくない.また,モニタリングによる波形変化をもとに警告を発することは可能であるが,その信頼性や偽陰性・偽陽性の可能性も常に念頭に置いておく必要がある.モニタリングでは,神経機能・経路の直接損傷を予防することは困難なこと,波形変動・減弱が生じたときの臨床的意義づけは単純でないことに留意する必要がある.手術にあたっては,各手技のもつ上記問題点を理解したうえで,マッピングとモニタリングを組み合わせた包括的な術中神経生理学的手技を駆使することが重要となる(図1).
ここでは,腰仙部手術における術中神経生理学的手技の役割を理解し,実践できることを目的とする.具体的には,腰仙部二分脊椎手術における誘発筋電図を応用したBCRモニタリング・脊髄神経前根同定の手技と合わせて,排尿機能温存と密接に関係する陰部神経同定について説明する.なお,術中神経生理学的手技を実施するにあたっては,麻酔はプロポフォールを用いたtotal intravenous anesthesia(TIVA)で維持した.筋弛緩剤は挿管時に短時間作動性筋弛緩剤を使用するのみで,麻酔薬による術中神経生理学的手技への影響を極力軽減するように配慮した.
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