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はじめに
人間は25歳を過ぎると,その可能な最大仕事量が毎年およそ1%ずつ低下するといわれる.この減少の程度は女性においてはさらに速い.仕事量の減少とは,好気性代謝,酸素消費量の減少であり,骨格筋の運動量,呼吸器系と循環器系能力の低下などを伴っている.
通常の運動においては老年者の酸素消費量が若年者と異なることはないのであるが,はげしい運動における最大酸素摂取能力が加齢とともに徐々に減少する.一方運動中の心拍数はその最大値が低下を示し,50歳で160ないし170,70歳では150を越えることがない.
血管の拡張能は加齢とともに失われる.大動脈をはじめ,大血管の硬化は20歳頃から始まるとされている.ただしこれは血管内膜の変化と平行するのではなく,コラゲンの変性など結合組織の変化によるものである.
血管の反応も加齢に伴って変化する.血管運動性反応は老年者において低下が認められ,温度変化に対する手足の血管反応は若年者のように著しいものではない.
末梢血管抵抗の増大は老年者の腎,脳,四肢末梢において観察されており,一方心臓の拍出量は減少してくるが,収縮期血圧は上昇している.心電図所見からは臨床的に心疾患を発見できなくても異常を見ることがある.
運動に対する老年者の反応が比較的乏しいこと,筋力低下と筋収縮持続能力の低下,運動時の心拍数増加が少なく,運動終了時の心拍数の回復遅延などは一般に広く認められる現象である.
老人の運動生理学的基礎を述べるとするならば,以上のような問題について論ずることが適当であるとは思われるが,これらはすでにしばしば指摘されていることであるので1,2,3),ここにはやや視点を変えて,老人を対象としたリハビリテーションに参考となる問題を2,3とりあげてみたい.
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