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Ⅰ.はじめに
我国の住宅構造も最近,欧米諸国の影響によって従来までの和式構造に洋式構造のとり入れが盛んに行われるようになって来た.洋式構造は高低差が少なく,生活動作はほとんど水平的な移動動作(腰掛けた姿勢,および立位)で遂行される.これに対して,和式構造は敷居,土間,浴槽,便所などにみられるように段差にとみ,生活動作に垂直的な移動動作(床に座る動作から立位)が必要となることが多い(図1).このことが障害者にとって和式での生活を不利(handicap)なものにし,多大なエネルギーと時間を費やす原因となっている.これらの不利を少しでも解決する一手段として,家屋改造が行われる.しかし,家屋の改造と一口に言っても改造の形態にはかなりの幅が見られる.①まったく新しく住宅を建てる.②生活を営む部屋,それらを結ぶ廊下,新しく継ぎ足す増築,などを含めた全面的な改造.③住宅の一部分に限られた部分的な改造.④住宅自体には手を加えず,種々の工夫によって不利を解決する.たとえば,浴槽へのトランスファー(移動)にイスを用いたり,ロープを使ったり,車イスが操作しやすいように家具の配置を変えたりである.
以上,大きく4つの形態に分類できると考えられる.改造とは「造り直す,造り変えること」であり,この観点からすると工夫に関して改造とは言えないかもしれない.しかし,我々の改造における概念としては,これらの工夫により障害者が移動しやすくなり少しでも動作の不利が解决・軽減されるならば,大きな意味での改造に含まれるのではないかと解釈している.また,事実,障害者の家庭を訪問すると,いたるところにこれらの工夫がなされているのに気がつくし,前述の形態が重複して改造されているのが現実である.いずれにしろ,障害者の能力障害(disability),精神的,経済的,社会的条件,環境などの種々の因子により改造の形態は異なってくる.ここではできるだけ多くの改造例,あるいは工夫を中心にして,これらに付随する問題点,改造の留意点なども含めて述べることにする.
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