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Ⅰ.はじめに
最近の身体障害者の傾向として,重度重複障害の増加がある.厚生省身体障害者実態調査(昭和45年)の調べでも視覚障害を伴う重複障害者131万人の2%,視覚障害者25万人の10.8%で,増加の傾向がみられる.
治療に携わる医療関連職種の数の少ないことと相俟って,その治療の複雑性が,リハビリテーション目標の到達度を低下させている.しかし反面,今までは対象とされなかった視覚障害との重複障害も,徐々にではあるが,リハビリテーション的アプローチの適応であることが認識され,処方が出されるようになってきた.事実,当センターには中途失明者の施設(20床)を有していることもあって,現在までに,理学療法科で取り扱った3,450件中,重複障害者は61名で,視覚障害(全盲に近い)との重複障害者数は8名であった.内訳は次のような疾患があげられる.スモンと失明,脳腫瘍による片麻痺と失明,側索硬化症と失明,頭部外傷と失明,代謝異常と失明,眼球全摘術後の無気肺,黒内障性白痴,喘息,肺炎と失明,ダウン症候群と若年性白内障などである.リハビリテーション目標設定の達成率も他の障害と比較して差はない.しかし,そのいずれの例も,訓練期間が他(平均PT期間53日)より長いこと(平均85日)である.評価の3日で打切り中止となった重篤重複障害者も含めると,実際には100日を超える身体的リハビリテーションを必要とする場合が多い.
従来,重複障害に対するサービスの方法として「障害の部位,状態のうち,より重度な面が優先され,重度な側を担当する」あるいは「肢体障害を優先する」と形式的に割り切られているが,組織並びに技術体形,専門スタッフの不足などが,治療サービスを低下させているのが実情であろう.
当センターでは,各専門スタッフによる連係プレーによって,リハビリテーションが進められ,若干ではあるが視覚障害(特に中途失明者)を伴う重複障害の臨床経験を得ているので,その指導上の留意点について述べる.
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