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はじめに
リハビリテーション医学の分野に電気工学的機器が盛んに取り入れられるようになって,各種の障害者に対する治療にも工学的概念が組み入れられ,評価,治療の方法論も最近では大きく変化してきた.特にこのことは,生体反応を感覚・知覚入力の結果としての表出現象で把え,しかも入力系と出力系との間に存在する一連のフィードバック回路(feedback loop)を重要視するようになってきた点にうかがえる.人間・機械を問わず,情報(information)というものが回路あるいは径路の中に送られ,それによって制御(Control)が実現され,繰り返される機構はサーボ機構(servomechanism)と称され,1947年Wienerによって唱えられたCyberneticsの考え方に基づくものである.Isokinetic Exerciseの可能なCybex machineもこのCyberneticsの理論に基づき開発されたものといえる.1965年頃,J. Perrineによりelectromechanismと歯車の組み合わせによる等速性運動(Isokinetic motion)の可能な運動訓練器の原理が考案され,Lowmanらにより臨床的実用性が証明されるに至った.この訓練械器はCybexとしてLumex社より市販され現在では広く世界各国で使用されるようになってきた.
このIsokinetic Exerciseの考え方の導入により,筋運動訓練法はIsometric(等尺性),Isotonic(等張性)(これはさらにConcentric(求心性)とeccentric(遠心性)に分けられる),Exerciseの三つに大別されるようになった.Isokinetic Exerciseでは,他二者が抵抗や運動の範囲(筋収縮距離)をコントロールしようとするのに対し,運動の速度を調節できる点が大きな特色であり,しかもIsotonic Exerciseの特徴にIsometric Exerciseの有効性を加え合わせた新しい概念の筋運動訓練法といえる.Cybex machineにより得られる筋運動能力(muscular Performance)は筋トルク曲線として表出されるが,この筋トルク曲線からは,トルク値そのものの他に,筋収縮効率,筋仕事能,筋収縮の正確性(巧緻性)などの基本的運動能力のparameterを得ることが可能である.またこれに加え,Cybex machineでは,拮抗運動を一回で同時に行え記録できるため,相反神経調節度合をも,客観的に把握することは可能であり,筋運動能を高める訓練機器としての要素の他に,神経筋系の協調性の改善,感覚-運動の統合訓練などの要素をも備えていると思われる.しかも前述の各種パラメーターを分析・比較する事により,より客観的な筋運動能,神経筋系の協調性などの量的評価が可能となり,しかも筋トルク曲線そのものの型からは質的評価も可能といえる.これらの点から臨床的,研究的応用範囲は十分広いと考えられる.この小論ではIsokinetic ExerciseあるいはIsokinetic Exercise Machineが,特に中枢神経性疾患にどのように応用しうるかを主として臨床的面から検討し,加えてIsokinetic Exerciseの今後のあり方及び問題点についても触れてみたい.
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