とびら
O.T.の広がりと中心を求めて―Aさんの体験から
佐々木 光子
1
1国立療養所東京病院
pp.570-571
発行日 1976年8月15日
Published Date 1976/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101267
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患者のAさんとの出会いは,昭和41年4月の処方に始まり今日に至る.彼は22年程前に肺結核の為,肺切除術と胸廓成形術を受け,術後意識不明に陥り,左右に相次いで片麻痺を来たした.4ヵ月間のベッドサイドO.T.をし,一時O.T.は職員の都合で中止となるが,その当時の様子は四肢の各関節は寝姿のまま拘縮し,右上肢のみ不随意運動を伴う動きが見られた.ギャジベッドをあげた位置で,おむすびや苺を手づかみで食べ,頚の前屈がこれを助けていた.物を把むのに力が入りすぎる.言葉は構音障害の為に聞きとりにくく,顔面は口を動かすごとに誇張された動きをする.話すことは便秘の訴えと看護婦に促されて言うしわがれ声の「ありがとう」くらい.場違いにも「ありがとう」と言う.排泄は尿器とおむつを使用する.奇異なことは“目ばり”と称して布きれを体の色々な所に当てることである.この“目ばり”の場所と枚数は便秘と下痢の作用を調節するというAさんの言い分のため夜中でも看護婦を呼び出し直させていた,大便に便器が使えないことが後の3度の施設入所希望を実現させない理由のひとつとなる.
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