Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Ⅰ.はじめに
当院小児科外来より紹介されてくる乳幼児の疾患で特にDelayed Motor Development,Benign Congenital Hypotonia(以下BCHと略す),あるいはCongenital hypotoia,Delayed walking,Suspect of CP,Mild CP,と診断されて,まわってくるものの中で,継時的な観察により,単なるMental Retarded Child(以下MR児と略す)である場合が多い.
小児の発達を,評価,観察する場合に前川1)は非常に大きな個人差と幅があること,いちがいに何処から何処までが正常で,何処からが異常であるかを決めるには問題があり,その運動発達について正常より遅れているか,早いかの判定は可能であるが,それが早いものが優秀で,遅いものが悪いとは言えない,としている.その判定にあたっては運動発達に影響を及ぼす因子として環境因子を加味することの重要性を述べている.また運動発達に於てのNormal Variationと判定されるcriteriaとして①ある運動発達のみが遅れ,その他の発達が全て正常であること.②検査により神経,筋肉等に何ら異常が認められない.③頭囲が躯幹に対して正常範囲である事としている.
このcriteriaからみて,当センターで治療を行なったCaseは明らかに,運動及び精神面での遅滞が早期からみられるものとBCHのように,当部の診断から究極的には単なるMRのみと判明するものもある.
ちなみにBCHと診断された12人のうち6人がMRのみ2)であり,4人が本来の知的に問題のないBCHで,残りの2名はataxic typeのCPに移行した.この事からも乳児のBCHの早期診断の困難さがうかがわれ,乳児の運動発達の遅れと筋緊張低下が前景に出ている場合には,本来の知能障害が2歳位までわからず長期のfollowupの必要性を痛感する.
我々は歩行の遅れを主訴として当センターを受診した昭和45年1月から50年12月までのMR児30名の治療に対して,PTの立場からどのようなアプローチにより最終目標としての,歩行獲得まで達し得たかについて触れたい.また歩行獲得前のMR児に対してのPTというものが元来軽視されがちでありPTのニードが果してあるのか,或いは何もせずにその子供の生来持っているreadinessに依存し自然な発達を待てばよいのか,外から発達の芽を可能な限りひきだすように援助していくべきか,これ迄のMR児のPTを行なった経験からその点について述べてみたい.
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.