The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 9, Issue 11
(November 1975)
Japanese
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Ⅰ.はじめに
脳卒中の患者の機能の回復は,特に上肢の場合良いとは言えない.それは,上肢の行う動作のほとんどが巧緻性を要するものであるため,ブルンストロームのステージで2~3へ,3~4へと改善されても実際の日常生活動作ではほとんど実用的な変化ではなく,又現実に機能の悪い上肢を使うことは,患者にとってよほどのモチベーションがない限り容易なことではない.それよりも健側手を使って用を足した方がはるかに能率・効果的といえる.このような考えにもとづき,従来より作業療法では片麻痺患者に対して,麻痺側の訓練と共に利き手交換や健側による片手動作訓練が重視されている.しかしよく観察してみると,健側で正常と思われているはずの上肢の動きの中で,特に細かな巧緻性を要する動作にどことなくぎこちないところがあることに気づく.たとえば,利き手が右手である右麻痺患者の健側左手によるお箸の動作とか,書字動作などにおいては,非利き手の動作であることを考慮しても,正常人に比べると動作が遅く,正確さにも欠けるような印象をうけるのである.又左麻痺患者の場合にも,右手で動作をする場合健側の右が利き手であるから,理屈の上では機能には問題なく使えるはずである.これらは,日常の生活では多くはめだたないが,詳細に調べると問題があるようにも思われる.そこで今回,韮山温泉,中伊豆温泉,伊豆逓信病院に入院中の片麻痺患者の非麻痺側の上肢機能について,主に動作に用するスピードの点で調査を行なった.
調査方法はこれまで一般に行なわれている『写字によるテスト』と,心理の学習力テスト等に使われている『星型テスト』左右方向への動作を繰り返す『横線テスト』を用い,書字機能をスピード(所要時間)によって評価する方法を用いた.
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