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Ⅰ.はじめに
第9回日本理学療法士学会において,リハビリテーション工学をパネルディスカッションにとりあげるから,その座長を引き受けてほしいと古川学会長のご依頼があったとき,筆者は二つのためらいを感じた.
その一つは,リハビリテーション分野における研究実績のない自分が,斯界の専門家の方々の討論を司会して,果して会員の納得されるような議論がなされうるだろうかというためらいであった.
もう一つは,数式を用いないでリハビリテーション工学を説明しきれるかというためらいであった.工学畑の人間は理詰めの話が多く,ややもすると数式の変形,計算に終始し易い傾向がある.医と工の境界問題を論ずるとき,数式をもち出すと,医側に理由はともあれ,理解不可能という短絡現象を惹起するおそれがある.
しかし,筆者の提唱するリハビリテーション工学は,“動特性”の応用として扱われなければならない.動特性というものは,何らかの形で“微分”とか“積分”という概念が含まれているので,この壁を乗りこえないと永遠に理解されないことになる.
多くの工学が“動特性”の導入によって著るしい進歩を遂げたことからみて,種々の機器を使用するリハビリテーション分野も“動特性”を導入することにより必ず新らしい境地が開かれると確信している筆者としてはどうでも,この壁に挑戦しなければならなくなって,司会を受諾する決意をもった.
幸い,各演者の先生方はそれぞれの問題点を適確に把握していただき,極めて示唆に富む研究を発表していただいたので,筆者のまとめ方のまずさを除けば,会場の諸氏の同感を得られる検討が行われたと考え感謝している.各演者の論旨の概要をご講演順にご紹介させて戴く.
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