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学会の抄録をみると必ずシンポジウム(以下シンポ)とパネルディスカッション(以下パネル)が組まれている.多くの学会でシンポが格上でパネルが格下の発表形式として扱い,内容を吟味して企画しているとは思えないし,また,座長も,シンポとパネルを区別して司会しているようにはみえない.各演者が連続して発表し,壇上の席に並んだ後,フロアーからの質問,意見を受けるとともに,演者間の意見を交換し,最後に座長がコメントする形を取っている.筆者もこの形式に疑問をもたなかったが,寺山和雄先生(信州大学名誉教授)が2002年に「整形外科」誌の「<私のひとこと>シンポジウムとパネルディスカッション」に「シンポのセッションであったが,各演者が特定の術式の経験を報告してディスカッションするものでシンポとは思えなかったので,パネルとして司会をすすめた」と書かれていたので,シンポとパネルで司会の方法も変えなければならないことを教えられた.
そこで,シンポとパネルとは本来どのような発表形式であるのかを検討してみた.参考としたのは草間悟著『医学研究発表の方法』(南江堂,1986),『勉強・研究・発表の技法』(南江堂,1996),広辞苑,三省堂常用外来語辞典,『現代用語の基礎知識』である.それらを総合すると,シンポは1つのテーマを複数の演者が異なった分野から意見を述べ,司会者や聴衆と意見を交わす討論会であるのに対し,パネルは1つのテーマに対し対立意見をもつ演者がそれぞれの見解を座談会形式で述べて議論を交わし,聴衆も参加する討論会である.前者がギリシャの饗宴から発したのに対し,後者はパネル(陪審員)から発しているので,討論形式が微妙に違う.草間先生の言葉を借りると,パネルが鎧兜に身を固めた戦いの場であるのに対し,シンポは背広姿の自慢話・世間話などの情報交換の場である.
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