The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 7, Issue 11
(November 1973)
Japanese
English
特集 脊髄損傷
家屋改造とADLの実際―車イスを使った症例
An idea of the interior design for paraplegic patients.
山本 俊子
1,2
Toshiko YAMAMOTO
1,2
1宮城県拓杏園
2宮城県身体障害者更生相談所
pp.799-807
発行日 1973年11月15日
Published Date 1973/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100729
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1.はじめに
先日,市から茶の間に届けられた交通安全広報に“子供に足踏み運動を”というのがあった.車道に降りる前に必らず足踏みをして左右を確認しましょう,という主旨のものであった.身障者の街づくり運動が仙台でも進められ,中心街の主なところの縁石は削られてスロープになり,駅,官公庁,デパートなどにも車イス用トイレが作られ,公営住宅も身障者用が建設されている(図1).このような中での“足踏み運動”にふと考えさせられるものがあった.とかく私達は,肢体不自由者を障害の代表かのようにとらえがちで,不用意に「障害者に便利な環境は健体者にも便利」といってきたように思う.子供が足踏みをして車道へ降りる縁石は,視力障害者には車道を確認する大切なものとなるであろうし,下肢不自由者に苦手な歩道橋は,この人達には安心して渡れる横断歩道である.少し違うがテレビの洋画番組が日本語吹き替えになった時から難聴者をテレビの視聴者からしめ出してしまうことになった.
すべての障害者が,子供が,老人が,そして健体者が,互いが無理なく共存出来る,そんな環境づくりを求めたい.これはそのまま家屋改造のあり方をきめる第1の問題,すなわち家族との調和であり,障害に応じてどう設計するかは第2の問題となるだろう.
ここでは脊髄損傷者の生活環境づくりのあり方を,宮城県下の脊損の実態をとらえる中で考えていき,更に拓杏園で行なってきた家屋改造の進め方と,その症例を紹介して参考に附したい.
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