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はじめに
小児においても,治療上の手段として,‘切断’が行なわれることが少なくない.これに加えて,先天性の四肢欠損,形成不全に対しても,切断に準じたリハビリテーションプログラムが組まれるため,理学療法士として,小児を扱う場合にも,成人と同様に,切断および義肢に対する知識が要求される.われわれは,当センター診療開始以来,表1のような10例の切断児を扱ってきた.このほかにも,先天性欠損などで義肢装着の時期を待っている症例,また四肢奇形を有し,切断の予定されている症例もかなりの数にのぼっている.以下,われわれの経験を中心に,小児切断のリハビリテーション,特に小児下肢切断術前術後の理学療法についてのべる.
小児の最大の特殊性は‘成長’である.したがって,小児切断においても,これをまず念頭におき,切断のみならず,心身の成長とこれに伴う諸問題に十分な考慮を払わねばならない.成長についで,小児の場合,その両親特に母親に対する配慮も忘れてはならない.両親・家族以外の人たち,主として学校関係の教師・学友などにも切断児に対する理解を求めたい.理学療法士として,これら切断児を取りまく人々への啓蒙の一端を担うものである.治療のためとはいえ切断は,四肢の欠損を人為的に作るのみでなく,その結果として日常の不自由,作業能力の低下,想像に絶する心理的打撃など,多くの問題を生じさせる.このことと,前述の小児の特殊性をあわせて考えると,切断の高位・時期・訓練プログラム・義肢の処方と装着させる時期(年齢)などについて,成人とは異なった多くの注意が要求される.
切断高位の決定に際して,骨の長径成長に関与する骨端線部はできるだけ温存し,全長を長く残すようにする.たとえば,成人ならば大腿骨骨幹部での切断が考えられるような症例でも,小児の場合は,大腿骨遠位骨端部を残し,更に,他の条件が許せば,膝離断を行なうことが望ましいとさえいわれている(Lambert),しかし,義足の面から考えると,必ずしも賛成しがたい.
次に切断の時期について考えてみたい.外傷・腫瘍・血管障害による切断例の多い成人では,切断の時期はあまり問題とならないのに対し,小児の場合,先天異常の治療上切断が行なわれる場合は,とくにその時期,すなわち,‘何時切断すべきか’が大きな問題となる.切断の適応があっても,切断を何時行なうべきかは,症例によって異なってくる.患児自身が判断できるような年齢まで待って,その意思によって時期を決定することもひとつの考え方であろう.しかし,われわれの症例で2歳までに切断した例(図1-a,b,c)では,下腿切断であったためもあろうが,実に器用に義足をはきこなしている.このようなこどもを見ると,醜く変形した下肢を持って成長するよりも,むしろ,早期に切断し,適切な義足を与えた方が幸せとも思える.両親は,ほとんど早期切断を希望する.
また,下肢の変形から二次的に股関節の障害,代償性の脊椎側彎症などを生ずるおそれのある時は,早い時期に切断にふみ切らざるを得ない.
切断の時期と関連して,義足を処方する時期も考慮しなくてはならない.年長児の場合は,一連のプログラムの中でその時期を設定していけばよいが,切断手術を要しない先天性欠損の場合や,1歳以前に早期切断が行なわれる場合は,運動発達とあわせて,10-12か月に最初の義足が処方される.このことは,乳幼児の心理的発達・ボディ・イメージの見地からもたいせつである.
義足の処方について,学童期以後は,成人と同じ原則(図2)に従ってよい.幼児期には,やはり特別な考慮が必要である.先にのべたように,できるだけ長い断端が作られていれば下腿義足の場合,軟ソケットを活用して,いわゆるtotal contact式の義足を装着させることもできる.足部は小児では果関節を必要とせず,SACH足またはゴム足でよい.
大腿義足の場合,高位としては,吸着式ソケットの適応域であっても,実用長の上では,成人よりはるかに短かいため,さし込み式ソケットを用いることもある.また,膝接手を用いて遊動膝にするか,膝固定式の棒義足にするかも,年齢との関係上,難問のひとつである.実際にこの点で悩まされている症例もあるが,原則的には,なるべく早く遊動膝にする努力を払うべきであろう(図3).
小児の義足で,不適合を生じやすい部分はソケットよりも,むしろ長さである.このため,小児の義足は簡単に延長できるような構造が望ましい.
次に理学療法の実際についてのべる.
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