Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
上肢切断者の理学療法の目的は,
a.手術創の治癒を促進し,義肢適合に備えて切断端を削痩し,かつ形状を整える(stump shrinkage and shaping)。
b.関節運動範囲の維持と増大
c.義肢をコントロールするための筋力の増大
d.協調運動性(co-ordination)の促進
e.正しい姿勢の保持及び矯正
である。このうちa,b,cは上肢切断のみでなく下肢切断の場合も重要である。dの協調運動性の練習は,上肢切断者の義肢装着前訓練の重要な目的で,準備義手(preparatory prostheticsまたは仮義手)を使って作業療法室で行なうのが好ましい。eは,下肢切断のみでなく上肢切断の場合にも軽視されてはならない。
手術創の治癒を促進し,循環障害・浮腫・腫張を防止し,かつ切断端の削痩のために用いられる手段としては,水・マッサージ・包帯・光が用いられる。渦流浴(whirl pool bath)は機械的清浄作用があり,痂皮を除去し,血行を促す効果がある。組織の浸漬軟化を防ぐために水温は40℃以上にしないことで,また時間は20-30分に限定する。渦流浴は血行を促すため,浴後一時的に多少浮腫を起こすことがあるから良く注意しなければならない。また,あまり長期間渦流浴を用いると,断端の削痩が長びきかえつて義肢適合が遅れる結果となるので,創面の治癒と清浄の目的が達せられたならば,使用を止める。創の治癒を促進するために紫外線を用いることの効果は,周知のことである。
切断端の削痩を早め,形状を整えるには,弾性包帯が最も効果的で,図1は,上肢切断端に対する弾性包帯法を示す。
切断部位より高位にあるすべての関節の運動は,できるかぎり早期に始められるべきで,普通は術後数日で開始する。最初は理学療法士が補助するが,以後は患者自ら介助なしで行ない,次いで抵抗運動に入る。手術創の治癒次第,患者は切断端の残存筋を動かすよう,督励される。これは筋調整運動(muscle setting)と同様の方法で,患者自身で筋を収縮弛緩させる。これによって血液の循環が助長され,また瘢痕の癒着が防止される。手術創が治癒した後,マッサージが開始される。この効用は,瘢痕の癒着の防止,静脈流の環流を助けるほかに,切断端を他人に扱われることに対する恐怖の除去であって,切断者の中には切断端を人に触れさせないために,義肢の模型が不可能という極端なケースもある。
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.