特集 脳卒中のリハビリテーション
Ⅳ 日常生活動作
片麻痺患者の日常生活動作訓練
細川 忠義
1
1長尾病院
pp.526-532
発行日 1971年11月9日
Published Date 1971/11/9
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100517
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はじめに
日常生活動作(Activities of Daily Living)とは生活し,仕事をし,娯楽を楽しむうえにおいて必要最少限度の基本的身体動作であって,人種,生活程度,生活習慣に違いがあっても,大部分は共通しており,一部環境に応じた特殊の動作が加わっている.
わが国の片麻痺のリハビリテーションにおいて最も矛盾していることは,脳卒中の治療が病院で行なわれるとき椅子,ベット,靴のまま歩ける廊下,部屋などの洋式の生活様式のうえにたって行なわれるのに対して,家庭に帰るとこれと全く違った,靴を脱ぎ,畳の上を歩き,畳の上に敷かれた布団で寝るという和式の生活様式を余儀なくされているということである.この生活様式の激変に対して,片麻痺患者はどう対処しているか,どう適応しているかは,日ごろその治療に従事する者として非常に関心のあるところである.
そこで,ADLをひとつの指標として退院後家庭生活にもどった片麻痺患者をアンケートにより調査し,入院中の退院直前のADLと比較してみるとともに,これを土台にして家庭における和式のADLのあり方について考察してみた.
ただ入院中と家庭でのADL調査の結果の間に差異があっても,そのすべてを和式洋式の生活様式の相違に帰することはできない.退院後は入院中のように密に医師・看護婦・セラピストの監督や激励を受けられないこと,家庭の受け入れ体制(放置また過剰保護)や患者自身の意欲の変化も影響を与えているからである.
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