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はじめに
PT・OTが法的身分の確立を得た時をひとつの契機として,理学療法には具体的な発展策がいろいろの形をもって現われた.たとえば,多くの病院・施設はリハビリテーション科,理学療法科,機能訓練棟などとよぶ部門を新設し,あるいは強化拡充をはかり,機構上でも在来はある1つの科に所属していたものが,独立し活動をしやすいように改め,また,内容は従来は医師が行なっていた仕事の一部をPTが担当するなど,幅の広い改善がみられて,こうした面でみると過去数十年にわたるひっそくしたあるいは放置に近い状態におかれていた理学療法に,あらためて医学の光が射しこんだという感慨がわきあがるのである.
しかし,このような現実面は,日本全体の一部分の現象であり,そのかたわらではわが国独自の歴史をもつ理学療法が踏襲されているといった現状である.この過渡的な環境の中のPTの周囲には,おのずから未解決の問題が山積して,PT自身が前向きの姿勢で取り組むべきことも多い.‘訓練は病室の一隅に椅子を並べて平行棒代わりにし,ござを敷いてマットにしている’と素朴に語る人もいる.
最近の話では,全国的にみて,職場をかえたい希望者が多い,といわれるが,自然のなりゆきとはいいながら,理学療法の発展のためには,問題を残すようである.そして歴史の浅いPTの職場の中には,未発達なひよわさがび漫しているような印象をもたないわけでもない.いずれにせよ,現在の足場を強固にして未来を築くという布望に対しては,現在ほど職業に対してのファイト(根性)を必要とする時期はないと思われる.
いうまでもなく,理学療法の水準を高めるためには,理論と技術を勉強しなければならないが,われわれが訓練現場で維持しなければならないものは,患者とPTのかもすべき人間関係であり,さらに治療と不即不離にある指導的要素を高めるにも,人間関係のもつ意味は重要である.
そして,指導の対象は患者だけではなく,疾患の種類,年齢に応じてその家族を対象とすることもあり,PTの強いファイトが要求される.いろいろな面でPTが足をふんばる必要のあることをいいたいが,私の経験している療育の中のPTの仕事の一部を述べて,その中から,何かをすくっていただくことができれば幸せとしたい.
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