特集 中耳真珠腫最新の知見—病態から治療まで
II.先天性真珠腫
先天性真珠腫の成因
相見 賢治
1
1Department of Otolaryngology-Head and Neck Surgery, University of Illinois College of Medicine
pp.775-784
発行日 1987年10月20日
Published Date 1987/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492210379
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I.はじめに
先天性真珠腫は正常な中耳,鼓膜,乳様突起,錐体部に現われる角化性上皮?腫で,その成因には諸説があるが発生学的成因の研究は少ない。しかし先天性中耳真珠腫の報告症例は増加しつつあり,一方CT診断の進歩とともに稀ではあるが錐体部真珠腫が側頭骨腫瘍の重要な鑑別診断の対象として注日されている。そのため成因の理解は診断,治療の上にも必要である。
先天性真珠腫の発生因の追求にはつぎの二つの疑問に答える必要がある。第一はSchuknechtら1)のいうように,複雑な中耳の発生過程では上皮の迷入は常時可能であり,これを特定の発生様式で説明することは無理であるとするものであり,また他の一つはSadeら2)のいうごとく,発生初期の細胞には複数の発現可能性(pleuropotcntiality)があり,中耳粘膜のみでなく中葉性組織からも角化性上皮が化生しうるから,正常中耳内に角化性嚢腫がみられてもこれを先天的上皮迷入とする確証はないとの考え方である。
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