特集 中耳真珠腫最新の知見—病態から治療まで
I.成因と治療をめぐる諸問題
中耳真珠腫—成因と治療をめぐる諸問題
中野 雄一
1
1新潟大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.771-774
発行日 1987年10月20日
Published Date 1987/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492210378
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I.はじめに
中耳真珠腫は昔からよく知られている疾患である。にもかかわらず,最近はあたかも病態が異なった疾患のような印象を与えている。その理由はおそらく本症の手術成績がきわめて不安定で長期の経過観察が必要なためと思われる。すなわち現代の手術をもってしてもなお完全にはコントロールできないというあせりが,本症をクローズアップさせたものと思われる。そして困ったことに,このあせりはそれに対する本質的な反省を欠いたまま問題の解決を術式の改良や選択に求めたことである。今ようやくそのことに気づき本症に対する新たな見直しが始まったところである。
思えば本症には不明な点が多い。成因や病態が完全に解明されないまま鼓室形成術が適応された。不思議なことである。その不思議さのゆえに,耳科学の一分野を占めるにすぎない本症が今なお研究の対象となり,国際的にもクローズアップされているといってよい。
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