鏡下咡語
中耳真珠腫の手術ことはじめ
森満 保
1
1宮崎医科大学
pp.430-432
発行日 1998年6月20日
Published Date 1998/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411902735
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手術顕微鏡下に見る再発真珠腫はまさに上質のパールである。しかし,術者は真珠腫再発にわが手技の未熟さを嘆き,患者は術後障害に声をひそめて嘆いている。
中耳真珠腫はその自然発症が人間にしか見られないという,珍しい性格の,しかし結構頻度の高い病気である。病理学的には単なる角化上皮落屑の蓄積嚢胞であって,真の腫瘍ではない。しかし臨床的には大敵である。落屑は長年月の間に中耳腔一杯に蓄積する。嚢胞とはいえ,後天性真珠腫は偽嚢胞で鼓膜の弛緩部や後上象限に外耳道に開いた口がある。したがって当然感染する。角質物質は腐敗発酵し,周囲組織と反応,側頭骨の吸収破壊が起こり頭蓋内にまで拡大侵入する。これにもし病原菌が感染すると,髄膜炎や脳膿瘍を併発して患者は死亡する。
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