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I.はじめに
滲出性中耳炎の原因に関しては諸説があり,以前より諸家によって究明され検討されているが,明確な病態は不明である。
本疾患は幼小児に頻度が高く増加傾向にあり,難聴を引き起こしその経過は長期に及ぶことがしばしばであり,社会的問題となっており,その病因,病態に関しての究明を急がなければならない疾患の一つである。補体は炎症反応と非常に関係が深い。今日われわれは滲出性中耳炎の患者において血漿および中耳腔貯留液中の補体成分とくにC3a,C5aを測定したので報告する。C3a,C5aは補体の活性化途上においてC3,C5より切断されるフラグメントであり,炎症反応などを起こしIgE抗体によって起こるアナフィラキシー反応とは無関係であるが,以前よりアナフィラトキシンと呼ばれている。中耳腔貯留液中の補体に関しての報告は少ない。1978年Bernstein1)がC1,C4,C2,C3,C5を測定し血清に比べて低値であると述べているが,これは補体の活性化されていない成分であり直接炎症の程度を表わすものではない。そこでわれわれは炎症と非常に関係の深いC3a,C5aを測定することによって中耳腔粘膜における炎症の状態および障害の程度を検索し,中耳粘膜における病態の特徴および遷延化因子としての補体の役割などを検討する。
C3a and C5a, fragments of complements most closely related to inflammatory reaction in middle ear fluids, were measured.
C3, C4, CH50 in serum and C3a, C5a in plasma were normal.
Extremely high values of C3a and C5a in middle ear fluids was observed.
The values of C3a were 18,000ng/ml at maximum, 5,80Ong/ml at minimum, and 9,293ng/ml on average. The values of C5a were 86ng/ml, 20 ng/ml, and 55ng/ml, respectively.
The above results suggested that an extremely intensive inflammatory reaction might take place in the middle ear, and anaphylatoxin might play an important role as a delayed factor in otitis media with effusion.
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