鏡下咡語
星状神経節ブロック
若杉 文吉
1
1関東逓信病院ペインクリニック科
pp.974-975
発行日 1984年11月20日
Published Date 1984/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209877
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星状神経節は全交感神経系の中核である 星状神経節stellate ganglion SGは下頸神経節と第1,稀に第2胸神経節の融合した頸胸神経節で,一側のSGはその側のダーマトームでT2あるいはT3以上,上肢,顔面,頭頸部を支配している。そしてSGは体の一部分を分担支配しているという点では,たとえば腰部交感神経節などと同列であるが,これをブロックした場合は,いささかニュアンスが異なる。
すなわち腰部交感神経節ブロックはおよそその支配領域のブロック効果にとどまるのに対して,星状神経節ブロックstellate ganglion block SGBはその支配域のみならず,全身への影響も否定できない,それはSGが脳血管への支配を担当しているからに違いない。SGBにより脳幹への血行改善がホルモン分泌などにも影響を与えていることが考えられる。たとえばSGBを繰り返した閉経期婦人が,また月経再来をみるなどである。さらに10年間不妊だった女性が明らかにSGBを繰り返したためとみられる妊娠が何例かあるなどである。さらにSGBで便秘が改善したという例が多いし,SGBにより食欲が増し,体重が増加したという例は多い。前述の支配領域にもかかわらずSGBのたびに足の先まで暖くなる例もよくみる。さらにSGBを30回以上繰り返した例では風邪をひかないという例が多い。これは風邪の侵入門戸である鼻腔,咽喉頭などの粘膜がSGBにより強固にされるためなのか,全身の抵抗力がついたためか定かではないが,風邪をひかないという例の多いのは注目に値する。
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