特集 滲出性中耳炎—最新の知見—
III.診断
鼓膜穿刺,切開と貯留液
星野 知之
1
1浜松医科大学耳鼻咽喉科
pp.807-812
発行日 1984年10月20日
Published Date 1984/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209849
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I.穿刺・切開の適応と実際
中耳腔に液体の貯留が確実にある,あるいは疑われるときに,さらにこれを確かめる診断的目的のために,また液を排除して治療を行うために鼓膜の切開や穿刺はよく行われる。滲出性中耳炎を単に診断するだけなら穿刺(tympanocentesis)でよいが,治療効果をあげるには切開(myringotomy)を行うほうがよい。穿刺針のついた注射器の吸引だけでは不充分で,液体を充分に吸引除去するにはより大きな切開孔が必要となる。ただ萎縮があったり弱々しくみえる鼓膜で,切開して穿孔が永続しはしまいかと心配されるような場合には"小さな切開"の意味で針で穴をあけ,この穴から吸引すると安全と思われる。貯留液が粘性の低いものでそれは可能で,老人の滲出性中耳炎では,ときに行っている。針は先端が鈍であれば,あまり種類を選ばなくてよい。
中耳貯留液の細菌検査をより正確に行うために,切開に先立ち穿刺により液を吸引採取するが,穿刺前にアルコールで外耳道を充分清掃することがすすめられている1)。液が粘調であれば,このときも切開する必要がある。液の採取には吸引管を特殊な採取ビンに接続しておく。Senturia,Juhnタイプなどさまざまなビンがあるが,接続したとき視野を妨げないものでないと使いにくい。
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