特集 滲出性中耳炎—最新の知見—
I.基礎的知識
中耳・耳管粘膜の機能的形態学—正常と病態との比較
高坂 知節
1
1東北大学医学都耳鼻咽喉科
pp.721-736
発行日 1984年10月20日
Published Date 1984/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209839
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I.中耳・耳管の形態と粘膜の微細構造
1.耳管(Eustachian tube)の形態
滲出性中耳炎(otitis media with effusion,OME)の発症は「耳管の病態と関係が深い」と以前から問題にされている。とくに中耳炎の頻度が成人に少なく幼小児に多い事実も両者の耳管機能の差に起因するのではないかと疑われている。しかし,耳管の形態についての詳しい解説は比較的少ないので,まず冒頭にこれを取り上げてみたい。
耳管は骨部と軟骨部という二つの解剖学的に異なる部位からなっていて両部位の接合点の内腔は最も狭くなっている(図1)。この部を耳管峡(tubal isthmus)と呼び,計測によれば,最小で1.0×1.7mm,最大で4.3×1.7mmと報告1)されているが,最近のTodd Jr2)の測定結果では,峡部の大きさは年齢・性により変化しないこと,左右では相関すること,平均径は1.47mmであること,慢性中洋炎の既往のあるグループの峡部径は,既往のないグループのそれに比し有意に(P<0.01)大きいことなどが報告されている。
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