特集 滲出性中耳炎—最新の知見—
I.基礎的知識
耳管と鼻咽腔の解剖と機能—正常と滲出性中耳炎との比較
熊沢 忠躬
1
1関西医科大学耳鼻咽喉科
pp.737-745
発行日 1984年10月20日
Published Date 1984/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209840
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はじめに
滲出性中耳炎は古くから中耳カタルotitis media catarrhalis,otitis media exsudativaと,そのほか多くの名前がつけられているのは,その疾患の本態が判明していないからである。従来の耳鼻科医の概念として炎症症状がなく鼓膜穿孔もないのに中耳腔に液が貯留するものを滲出性中耳炎と認識していた。最近はこれにglue ear,blue earさらには膿性の液の貯留を含めてotitis media with effusionとして統一され,明らかに急性,慢性中耳炎と別個の疾患として考えられるようになり,この病態解明の関心が高まってきている。従来からその病因として耳管狭窄によるhydrops ex vacuo説が簡単に信用されてきた。しかしながらこの病因説だけで単純に解決できない諸現象に遭遇することがしばしばある。いま考えられる病因と,それに矛盾する現象とを挙げ,滲出性中耳炎に潜む謎を浮彫りにしてみたい。
いずれにしても耳管の機能障害が基盤にあってそれに種々の外因,内因が加味され発症するものと考えることができる。さてどのような機能障害がこの疾患を起こす引金になるのか,また滲出性中耳炎にはどのような耳管機能障害が起きているのかは未知のものである。よって本論文は耳管,鼻咽腔の解剖,機能を正常人の場合と滲出性中耳炎時の場合とで比較検討して,滲出性中耳炎臨床像解明の手がかりとしたい。
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